なぜ住宅の断熱性能は義務化された?省エネ法改正の内容や影響も解説
これから家を建てようと考えている方の中には、省エネ法が改正されて断熱義務化が始まると聞いたことがある人もいるでしょう。しかし実際のところ、断熱義務化で何が変わるのかよく分かっていない方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、断熱性能の義務化について、行われる理由や背景、具体的な内容や影響などをわかりやすく解説していきます。
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断熱性能の義務化とは?
断熱義務化とは、一定レベル以上の断熱性能を持つ省エネルギーの家づくりを義務化することです。省エネ法改正に伴い、2025年以降、一般住宅だけでなくマンションや商業施設など全ての建物に適用されます。これまで断熱性能の等級レベルは1~4に分けられていましたが、断熱義務化により新たに5~7等級が加わり、義務化適用後は等級4未満の建物は建てられなくなります。
もちろん高断熱の家を建てるにはそれなりの費用がかかりますが、ランニングコストの節約につながるため、長期的に見ると経済的にもメリットがあります。
省エネ住宅が義務化される理由
断熱性の高い省エネ住宅が義務化される背景には、「2050年カーボンニュートラルの実現」「2030年度温室効果ガス46%排出削減」という政策目標があります。この政策目標の実現のためには、エネルギー消費の約3割を占めている建築分野における省エネ対策が必要不可欠です。
実は日本の断熱基準は20年以上前に作られたものが適用されており、先進国の中では最低レベルです。世界的な脱炭素の流れの中で、日本も社会全体の省エネ促進に取り組む必要があり、その一つとして建物の省エネ性能に基準が設けられることになったのです。
省エネ法改正の内容
省エネ法改正の大きなポイントは以下の3点です。
- 新築住宅は省エネ基準等級4以上が義務となる
- 住宅の販売においては省エネ性能の表示を推進する
- 既存建物の省エネ改修にも低利融資制度を創設する
省エネ法改正に伴い、等級4未満の住宅は新築できなくなり、販売時には断熱性能を表示することが推進されます。これにより、消費者が建物の性能を判断しやすくなります。また、既存の建物に関しても、断熱リフォームにかかる工事費を低金利で融資するなどの措置が設けられます。
断熱性能の義務化の具体的な内容は?
断熱性能の義務化で最低等級となる断熱等級4は、壁や天井だけでなく開口部にも断熱が必要です。具体的には、屋根裏と壁にグラスウールなどのなどの断熱材を用い、さらにアルミサッシの複層ガラスを使う必要があります。断熱等級4が基準となりますが、これは他の先進国では低いレベルです。
断熱性能の義務化における影響
断熱性能の義務化が与える影響について、3つの観点から解説していきます。
費用面での影響
日本は温度変化が激しいので、断熱性能によって冷暖房にかかる光熱費が大きく削減できます。高断熱の住宅は建設に必要な費用は高くなりますが、ランニングコストが大幅に抑えられるため、長期的に見ると環境だけでなく家計にも優しい住まいづくりが実現できます。
健康面への影響
断熱性能の低い家は、健康面にも影響を与えます。例えば、冬場の室内の温度差によるヒートショックでは年間多くの人が亡くなっており、結露が原因で発生したカビやダニによってアレルギーを発症する方も少なくありません。住まいの断熱性を高めることは、健康的な暮らしを手に入れることにもつながるのです。
省エネ格差
断熱性能は、経済面や健康面に大きな影響を与えるため、断熱性能の違いによって省エネ格差が生まれてしまいます。また、断熱性能は住宅ローンや税制、資産価値にも大きく関わるため、経済面で見ても格差が広がることが予想されます。
断熱性能の義務化により環境に優しい住宅がスタンダードに
断熱性能は、住まいの快適性だけでなく、経済面や健康面にも大きな影響を与えます。義務化適用後は等級4が最低ラインとなりますが、カーボンニュートラルを実現するためには不十分と言われています。これから家を建てる場合は、環境に優しい住まいを目指すためにも断熱等級5以上の家づくりを検討しましょう。